日本の食文化は豊富で、使われる食材も多く野菜や果物、魚以外にも鶏や豚、又は牛といったように様々な動物の肉を使った料理があります。
中には隠語として植物の名前を使った料理もあり、「桜鍋」や「牡丹鍋」、また「紅葉」、「柏」などは居酒屋や料亭などのメニューで目にする事は多いですよね。
しかし、料理に使われている肉の名前は知っていても、なぜそんな名前になったのかまでは知らない人は多いと思います。
今回は、そんな「桜肉」「牡丹肉」「紅葉肉」「柏肉」は何の肉?また、なぜそう呼ぶの?についての解説です。
目次
肉の呼び名が不思議
一般家庭では、豚肉や牛肉などは産地に違いはありますが、呼び名までは変わらず、豚は豚であり牛は牛と呼んでいますよね。
また、同じ家畜である馬も鶏も多くの人に食されていますが、その呼び名が桜や柏と植物の名前を代名詞にしている場合があります。
また、同じように野生動物である猪や鹿などにも植物の名前が付けられており牡丹や紅葉などは有名ですよね。
季節的な事や餌などの関係でこのような名前がつけられたとも考えられず、何とも不思議なことですが。。。
その為、馬の肉の事を「桜肉」、猪の肉を「牡丹肉」、鹿の肉を「紅葉肉」、そして鶏の肉を「柏肉」と呼ぶ事に疑問を持ったため、語源などを今回は調べてみました。
桜肉の由来
桜肉と言えば馬肉であり、ユッケや桜鍋などは有名なところですよね。
鮮やかな桜色をしている事は食べたことがある人はご存じかと思いますが、その由来までを知っている人は少ないと思います。
馬を桜肉と呼んでいる由来には諸説いろいろあり、どれが本当の説なのかは良く分かっていないとも言われていますが、あげてみると以下のような事が分かりました。
・見た目の説
昔、戦をしている時、食糧に困った兵士が倒れた軍馬の肉を切ったところ馬肉の色が鮮やかな桜色をしていた事から馬の肉を桜肉とつけたと言う話があり、新鮮な馬肉ほど桜色が鮮やかでありヘモグロビンやミオグロビンが多い事を示しています。
また、馬肉を皿に盛る際、桜の花が咲いたように盛り付ける事から桜肉と呼ばれたと言う話や、馬の肉が美味しくなる季節が桜の咲く時期だからと言う説もあります。
・地名からつけられたと言う説
昔千葉県の佐倉にあった江戸幕府の牧場に優秀な馬が揃っていた事で「佐倉の馬は良い」となり、「馬は佐倉だ」と言われるようになった事が佐倉=桜になったと言う説があります。
・詩や俳句から登場したと言う説
高村幸太郎の詩や坂本龍馬と高杉晋作がお酒の席で詠んだ歌の中に登場したことが発端とも言われています
どれも信憑性にかける為、確かな語源は分かっていないとされていますが、個人的には、馬肉が桜の咲く季節に美味しいと言われる事と、切り身が他の肉と比べて鮮やかな桜色をしていると言う説に一票入れたいところですね!
牡丹肉の由来
桜鍋よりも馴染み深い牡丹鍋は多くの方がご存知のように猪の肉を使った鍋料理であり、猪鍋(ししなべ)とも呼ばれ縄文時代から食べられていたと言われています。
猪は昔から農作物を荒らす害獣と言う事で捕らえられる事が多かった為、農民の間では古くから食べられていましたが、本来日本では殺生を禁じる仏教の教えから公に食べる事は禁じられていました。
しかし、戦の際に滋養や保温を目的として野生の猪を捕らえて肉を食べる事もあり表向きには禁止されているため、植物の花を隠語にして料理したことが由来とされています。
その植物の語源となったのが花札の牡丹とされています。
また、もう一説には、猪肉を薄く切り牡丹の花に似せて皿に盛りつける事に由来するとも言われています。
紅葉肉の由来
紅葉肉は、鹿肉の事であり牡丹同様に10月の花札の絵柄が由来になったと言う説があり、猪と同じように鹿が生息していた地域では食されていました。
また、もう一説には百人一首の「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき」からきたとも言われておりこちらの方が有力説とも言われているようです。
紅葉肉はヨーロッパで高級食材として流通しており、高級レストランなどでも出される事があるようです。
また、鹿の肉はタンパク質が多く脂質が少ない為、低カロリーな食材なのでダイエットに向いている食材でもあります。
このような猪や鹿の肉などは昔から野山に野性として存在していた為、密かに食べられていたため、公にはできないので隠語がありましたが、家畜である豚や牛は江戸時代には食べられる事は無かった為、牛と豚に関しては隠語が無いと言われています。
因みに、昔食べられていた獣は、キツネ、カワウソ、オオカミ、猪、鹿、熊、ウサギ、犬、サルと言われています。
昔の人は農作物や魚ばかりを食べていたと思っていましたが、意外に動物性タンパク質も十分摂れていた事が分かり、現代とそれほど変わりがない事に驚いてしまいましたね。
柏肉の由来
また、もう一つ忘れてはならないのが「柏肉」であり、これは鶏肉を指しています。
しかし、鶏といっても現代の真っ白なニワトリではなく、日本在来種でもある羽の色が褐色の鶏の事であり、これが鶏肉一般の名称にもなっています。
柏と呼ばれる語源も様々にありますが、有力説には鶏の羽の色と柏餅に使われる葉の色が似ている事が由来になったとされています。
また、他には柏手を打つ姿と鶏の羽ばたく姿が似ていると言う説や、宮中の食膳の調理を任される人を膳・膳人(かしわで)と呼んだ事に関係すると言う説もありますが、いずれも鶏肉ではなく柏手の語源と混同したものとされており柏の呼び方で定着している地方もあります。
現在も地鶏の産地として名古屋コーチンや薩摩鶏、そして秋田の比内地鶏などがあり、焼き鳥などでも柏の呼び方で定着していますよね。
まとめ
昔は、馬や猪、鹿、鶏などの獣肉を食べる事に対して仏教では殺生戒の為に禁じていましたが、戦の時の飢えを凌ぐため、又は滋養や薬食にと野生動物や家畜に隠語をつけて密かに食べていた事には驚きましたね。
また、その名前の由来が花札や見た目から植物の名前を思いつくと言うところにも驚いてしまいましたが、食糧に困った時代昔の人は栄養のバランスを考えていたと考えると致し方ないのかもしれませんね。
以上、「桜肉」「牡丹肉」「紅葉肉」「柏肉」はなんの肉?なぜそう呼ぶについての解説でした。
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